みんな知ってる

大学生のころ『Pump up the Volume』(1990)という映画にかなりはまっていた。関テレをはじめローカル局の深夜枠で放送していたB級映画を録画するのが惰性のごとき習慣となっており、そのおかげで偶然出会うことになった作品だ。それこそテープが擦り切れるほど見返した。クリスチャン・スレーターとサマンサ・マシスの共演で古臭い言い回しでは「青春群像」というジャンル。主人公はパッと見いわゆる「イケてない」高校生だが、自室に戻れば「Happy Harry Hold on」と名乗る煽情的なDJに扮し、同世代のリスナーたちをアジる。オープニングを告げる CONCRETE BLONDE の「Everybody Knows」がとても良い(YouTubeでPV落ちてます)。歌詞も味わい深く、世界がワザとらしい予定調和に彩られているのかを糾弾する。みんな知ってる。だれも世界を良くしようとしないことを。政治家だけではなく、会社員だって部長クラスが身分をタテに利権を貪っている。公正な判断や評価が存在しないことに対して、力のない者はどう立ち向かえばいいのだろうか? 不平等とは能力に差がない場合に生じる不満や不信のことであり、そうなるともはや暴徒と化して鬱憤を晴らすしかない。おそらく、そういった歪みを緩和するのが表現としての芸術の役割のはずだが、この国ではモドキが阿諛と迎合に韜晦している。みんな知ってる。そう、みんな知ってる。この世の中がくだらないってことを。

Pump Up The Volume: Music From The Original Motion Picture Soundtrack

Pump Up The Volume: Music From The Original Motion Picture Soundtrack