魔女狩り

計画停電のせいか、世間の風が冷たい。僕の勤めている研究所では工場に併設されているため、自家発電により電力を賄っている。であるからして、計画停電の影響を受けないわけだが、夜中まで煌々と電気を点けていると近隣住民から苦情が来たというのだ。魔女狩りや。密告者や。というわけで、居室の電灯を消して仕事をするように、というお達しが出たわけだが、今日はひどかった。なんせ曇天なのだ。17:00を回るとうす暗くなり、PC のディスプレーが仄明るくてまるでかまくらのなかのよう、といえばちぃっとは風情もあろうが、このままでは視力が落ちてしまふ。切れる Y 課長。
アスクルや! 蛍光灯や!!」
日経新聞などによると、首都圏のメーカーが保有する自家発電設備をフルに稼働すれば1800万kWになり、東北電力のそれに匹敵するという。上層部からの言い含めるがごときメールによれば、最大限に節電して余剰を出し、なるたけ東京電力に供給するそうな。そうすることで、社員の視力が低下するわけだ。まさに倫理学の問題だ。なら、いっそのこと、フレックス止めて定時出勤にして、17:00に会社を閉めよ、というべきなんじゃないのか? 無駄に残業している方々(故意か無意識かはよお分かりません)もたくさんいるわけだから、生産性の向上という御題目で、チャキチャキ仕事させればいいのですよ。第一、そんなに長時間かかる仕事なんてほとんどないように思いますよ。とくに研究開発部門では(季節性のものもあるので、長居できないと困る場合があることは否定しませぬが)。
兎にも角にも世知辛いです。
そして、TXは5割の本数での運行状況で、17:30に会社を出ても、秋葉原ではホームは満杯。薄皮一枚の隔たりで、津波に押し流された家々が広がり、原発が不気味に佇んでいるというのに、首都圏ではまるで何事もなかったかのようにみんな、歯車になっている。正直悪心を覚える。画一化、横並び、嫉妬。これが現実だ。被災地を対置すると、けばけばしいほど浮き立つ現実。地震に揺さぶられたおかげで、相対的にいまの生活を見れるようになった。それは僕だけではないはずだ。